※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
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前の記事で、集合の要素の始めとか終わり、集合の要素が小さいとか大きいという語を用いました。これらの表現は、集合の要素に何らかの関係(前後関係、大小関係など)があるという前提で用いています。この記事ではこの前提、すなわち集合の関係について考えます。
順序対と直積
2つの集合X=\{1, 2, 3\}とY=\{みかん, りんご, いちご\}を例にとります。これらの集合から1つずつ要素を取り出して順に並べたものを順序対(order pair)といいます。たとえば、(1, みかん)のペアは順序対です。2つの集合から生成される順序対をすべて書き出したものを直積(Cartesian product)といいます。直積X\times Yの要素は次の9ペアです。
(1, みかん), (1, りんご), (1, いちご),
(2, みかん), (2, りんご), (2, いちご),
(3, みかん), (3, りんご), (3, いちご)
順序対は、名が示すとおり順序が重要です。数字の集合Xどうしの直積 X\times Xを例に考えましょう。わかりやすくするために右のXをオレンジ色にします。X\timesXの要素をすべて書き出すと
(1, 1), (1, 2), (1, 3),
(2, 1), (2, 2), (2, 3),
(3, 1), (3, 2), (3, 3)
(2, 1)と(1, 2)は異なります。(3, 1)と(1, 3)、(3, 2)と(2, 3)も異なります。数字のペアだと前後入れ替えても同じに思えますが、順序対では順序にこだりますので、異なると考えます。
二項関係
直積から取り出した順序対に何らかの評価を下すことを二項関係(binary relation)といいます。数の集合X=\{1, 2, 3\}の直積から、要素を1つずつ取り出して順序対を作りましょう。
(1, 2)\in X\times X
ここで、1つめのXから取り出した要素1と2つめのXから取り出した要素2の関係を調べてみましょう。「1は2以下である」という大小関係は、真偽を確かめられますので命題です。この命題は明らかに真です。こうした真偽の判定は、直積の他の要素についてもできます。
一般に、Xの直積の部分集合R\subset X\times Xを二項関係といい、Xの直積を変域とする命題関数(x_1, x_2)\in Rを x_1 R x_2と表記します。二項関係には同値、順序、整列などがあります。この記事では同値についてみます。
同値
次の3条件を満たす二項関係を同値(equivalence relation)といい、記号\simで表します。
反射律:すべてのxについて、x\sim xが真
対称律:すべてのx_1, x_2について、x_1\sim x_2が真ならx_2\sim x_1も真
推移律:すべてのx_1, x_2, x_3について、x_1\sim x_2が真かつx_2\sim x_3が
真ならx_1\sim x_3も真
対称律:すべてのx_1, x_2について、x_1\sim x_2が真ならx_2\sim x_1も真
推移律:すべてのx_1, x_2, x_3について、x_1\sim x_2が真かつx_2\sim x_3が
真ならx_1\sim x_3も真
同値の概念から同値類(equivalence class)と商集合(quotient set)を定義できます。x_1の同値類[x_1]とは、x のうち、x_1\sim x が真であるものすべてです。そして、商集合X/\simとは、Xの同値類すべて、すなわち
X/\sim=\{[x]|x\in X\}
です。集合Xを同値類で取りこぼしなく分割(割り算)するイメージですので「商」集合といいます。果物の集合
X=\{みかん, りんご, いちご, ぶどう, すいか, なし\}
の同値類と商集合を考えましょう。この集合の要素のうち、最も好きなものがみかんとりんご、次に好きなものがいちご、ぶどう、すいか、そして相対的に最も好きではないものがなしだとします。このとき、みかんを代表元とする同値類は
[みかん]=\{みかん, りんご\}
同様に、いちご、なしを代表元とする同値類は
[いちご]=\{いちご, ぶどう, すいか\}
[なし]=\{なし\}
[なし]=\{なし\}
です。商集合はこれら3つの同値類から成ります。確かにこれらの同値類で集合Xのすべての要素を取りこぼしなくカバーしています。
X/\sim=\{[みかん], [いちご], [なし]\}