※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
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集合論に切片(segment)という用語があります。これは、1次関数のグラフの切片(intercept)とは異なります。1つの用語が複数の意味を持つとややこしくなりますので、翻訳するとき変えてほしかったです。英語では、segment:切り落とした後に残った部分との違いが明らかですので…
切片には、始切片(initial segment)と終切片(final segment)があります。集合の後のほうを切り落とした後、残った前のほうを始切片といいます。集合の前のほうを切り落とした後、残った後ろのほうを終切片といいます。ここでは、=を含む広義の切片ではなく、=を含まない狭義の切片について考えます。
集合$X=\{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7\}$を例にとります。この集合の要素5に関する始切片$IS_X(5)$は、$X$の要素のうち5より前の(小さい)ほうを集めた集合ですので
$$IS_X(5)=\{1, 2, 3, 4\}$$
となります。この始切片の要素のうち、終わり(最大)の要素である4を最大元(maximum element)といいます。そして、始切片の外にあり、後ろ(上)から始切片を抑える要素の集合$\{5, 6, 7\}$を上界(upper bound)、上界のうち始め(最小)の要素である5を最小上界(least upper bound)とか上限(supremum)といいます。
同様に、この集合の要素3に関する終切片$FS_X(3)$は、$X$の要素のうち3より後ろの(大きい)ほうを集めた集合ですので
$$FS_X(3)=\{4, 5, 6, 7\}$$
となります。この終切片の要素のうち、始め(最小)の要素である4を最小元(minimum element)といいます。そして、終切片の外にあり、前(下)から終切片を抑える要素の集合$\{1, 2, 3\}$を下界(lower bound)、下界のうち終わり(最大)の要素である3を最大下界(greatest lower bound)とか下限(infimum)といいます。
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この記事では、要素が一列に並ぶ集合$X=\{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7\}$を例にしました。次回以降の記事で説明するように、集合の要素の関係には、分枝や合流を含むものもあります。こうした複雑な関係を絵にしたものがハッセ図です。
リンク先の図表に現れる、分枝内の順序はあるが、枝を越えて順序づけはしない、比較的緩やかな順序を半順序といいます。この半順序に適用するのが極小元(minimal element)と極大元(maximal element)です。最小元と最大元がある半順序集合の各分枝に注目すると、それぞれの分枝の始めの要素が極小元、終わりの要素が極大元です。分枝ごとに極小元と極大元を考えることができますので、1つの集合に複数の極小元と極大元がありえます。大まかに、分枝ごとの行き止まりのイメージです。
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整列、半順序、全順序など、集合の要素の関係については次回以降の記事で詳しくみます。この記事で紹介した用語は今後も使いますので、その都度振り返りましょう。