※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
2024年5月20日
単調収束と優収束の定理(Lebesgue Measure)
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数学者でない私たちにとっての測度のはなしは、終わりに近づいてきました。今回は単調収束定理と優収束定理を紹介します。
単調収束定理
ボレル集合$\mathcal{B}$の部分集合$E$上の可測な非負関数$f$を考えます。この関数の増加列$0\leq f_1\leq f_2\leq f_3, …$が$f$に収束するとき、次式が成り立つことを単調収束定理(monotone convergence theorem)といいます。
$$\int_{E}fd\mu =\lim_{j\rightarrow\infty}\int_{E}f_jd\mu$$
この定理はおおよそ次のように確かめられます。まず、関数列が単調増加で収束することから、任意の$f_j$の値は収束先以下となります。すなわち
$$f_j\leq f$$
となります。測度の単調性から、両辺を$E$の範囲でルベーグ積分しても不等号が保たれます。
$$\int_E f_j d\mu\leq \int_E f d\mu$$
さらに、$\lim_{j\rightarrow\infty}\sup f_j=f$より、左辺の上極限をとっても不等号が保たれます。
$$\lim_{j\rightarrow\infty}\sup\int_E f_j d\mu\leq \int_E f d\mu$$
ファトゥの補題から
$$\lim_{j\rightarrow\infty}\inf\int_E f_j d\mu\geq \int_E f d\mu$$
$\lim\inf\leq\lim\sup$に注意して2式をまとめると
$$\int_E f d\mu\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\inf\int_E f_j d\mu\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\sup\int_E f_j d\mu\leq \int_E f d\mu$$
最左と最右ではさみうちされていることから、これらはすべて等号で結ばれます。関数列が収束するということは
$$\lim_{j\rightarrow\infty}\inf\int_E f_j d\mu =\lim_{j\rightarrow\infty}\sup\int_E f_j d\mu =\lim_{j\rightarrow\infty}\int_E f_j d\mu$$
よって
$$\int_E f d\mu=\lim_{j\rightarrow\infty}\int_{E}f_jd\mu$$
有界収束定理と優収束定理
関数列が単調増加でないとき、追加の条件がないと単調収束定理のような結論は得られません。具体的には、優関数という積分可能な関数で関数列が上から抑えられるという条件を加える必要があります。積分可能な優関数によって上から抑えられている関数列の任意の要素$f_j$とその各点収束先である$f$は、いずれも積分可能な可測関数となります。
少しフォーマルに書くと、ボレル集合$\mathcal{B}$の部分集合$E$上の関数列の任意の要素の絶対値が優関数の値($F$)以下であるとき、すなわち
$$|f_j|\leq F$$
であるとき
$$\int_{E}fd\mu =\lim_{j\rightarrow\infty}\int_{E}f_jd\mu$$
が成り立つ、というのが有界収束定理です。有界収束定理における上限は定数ですが、これを異なる値を取りうる$f$という関数に置き換えたものを優収束定理(dominated convergence theorem)、またはルベーグの収束定理といいます。これらはある種、有界な数列は収束するという数の世界の大原則を関数の世界に拡張したものです。
ただ、証明の詳細等については込み入ります。現段階ではtoo muchですので、また機会があれば加筆したいと思います。ルージンの定理、エゴロフの定理、フビニの定理(豆腐の体積の易しい求め方)、ラドン・ニコディムの定理(条件付期待値の定式化)なども、はじめて学ぶ私たちには荷が重すぎますね…
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ほとんどいたるところ
測度論や確率論の本を読んでいると、ほとんどいたるところとか a.e. という表記をみかけます。これはalmost everywhereのことで、零集合を除いた測度が正の集合についてという意味です。ルベーグ積分では、関数の挙動が奇妙になるところを零集合に押し込み、それ以外のお行儀のよいところにだけ正の測度を与え、積分のベースにします。
リーマン積分との違いとして、リーマンは縦に切り、ルベーグは横に切るという、見た目の違いが強調されることが多いです。また、リーマン積分できない変な関数も積分できることが強調されることもあります。
こうした紹介は若干ミスリーディングに感じます。ルベーグは定義域の一部を零集合に押し込めるトリックを思いつき、このトリックによってより柔軟な測度の概念で積分を眺められるようになったことを強調すべきだと思います。これを、志賀浩二『ルベーグ積分30講』p.183は「リーマン積分からルベーグ積分への移行は、積分という観点に立ったとき、連続関数の '完備化' であったという見方もできるのである」と書いています。
高木貞治『解析概論』p.430は、「Lebesgueは一片の咒語 'ほとんど' をもって、彼の積分論に魅惑的な外観を与ええたのであった」と a.e. のことを評価しています。この一節は志賀浩二『ルベーグ積分30講』p.169にも引用されています。
2024年5月19日
単関数とルベーグ積分(Lebesgue Measure)
※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
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複雑な形をしたグラフを近似するツールが単関数(simple function)です。これは、グラフを横棒で近似するものです。まずはこちらの図とかこちらの図をご覧ください。単関数のおおまかなイメージが持てると思います。
原啓介『測度・確率・ルベーグ積分』講談社 は多くの人が手に取る専門書です。このp.43に「ルベーグ積分を定義する戦略は、単関数に対して積分を定義しておいて、一般の関数については単関数による近似の極限で積分を定義することである」とあります。ルベーグ積分の導入のしかたにはさまざまあると思いますが、「なるほど、そうか!」と私の心に最も響いたのはこの一文でした。
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単関数
では、単関数の定義域と値域を定義しましょう。次のように、互いに素な$J$個の部分集合に分割できる集合$E$を定義域とします。$E$は全体集合$X$の部分集合とします。
$$E=E_1\cup E_2\cup E_3\cup…\cup E_J$$
すべての$j\neq k$について$E_j\cap E_k=\varnothing$です。そして、次のような$J$個の値からなる集合を値域とします。
$$\{a_1, a_2, a_3, …, a_J\}$$
すべての $j$ について$a_j<a_{j+1}$であり、$0\leq a_j\leq\infty$とします。このとき、単関数とは
$$\phi(x)=a_1m(E_1)+a_2m(E_2)+a_3m(E_3)+…+a_Jm(E_J)$$
つまり
$$\phi(x)=\sum_{j=1}^J a_jm(E_j)$$
ここで、$m(E_j)$は$x\in E_j$のとき1、$x\notin E_j$のとき0をとる定義関数(indicator function)です。$\phi(x)$は$x\in E_j$であるときにだけ$a_j$の値をとり、$x\in E_k$であるときにだけ$a_k$の値をとります。つまり、$\phi$は定義域の部分と値域の値が対応する関数だということです。
このように定義される$\phi$は横棒が階段状につづくグラフになることから階段関数(step function)ともいいます。この不思議な関数を用いて、ルベーグは新たな積分(面積の求め方)を提案しました。
ルベーグ積分
ボレル集合族$\mathcal{B}$の部分集合$E$上の非負関数$f(E)$についてルベーグ積分を定義しましょう。
$$\int f d\mu=\lim_{J\rightarrow\infty}\sum_{j=1}^J a_j\mu(E_j)$$
左辺はルベーグ積分の記法であり、右辺は左辺の意味を表しています。右辺の$\mu$の中にある$E_j$は$E_j=f^{-1}(\{a_j\})$です。これは関数$f$の逆像です(引き戻し)。値域の値を$a_j$としたとき、その入力元となる定義域の値が$f^{-1}(\{a_j\})$です。私たちになじみのある言葉にすると「$x$の値」になります。
したがって、$\mu(f^{-1}(\{a_j\}))$は「$x$の値」の測度です。この測度を横の長さとして、縦の長さを対応する$a_j$としたとき、長方形ができます。この長方形の面積を各 $j$ について計算し、$J$個足し合わせるというのが $\sum$です。これにより「関数$f(x)$の下の面積」を、さまざまな高さと幅の長方形の面積の合計によって近似できます。
そして、値域の分割を限りなく細かくしてゆくと、「関数$f(x)$の下の面積」と無数の長方形の面積の合計がぴったり一致します。これが $\lim_{J\rightarrow\infty}$です。このように積分しよう、というのがルベーグ積分です。
定義域のうち、変なところを可測であるが測度0と評価することによって(正の測度を持つ部分集合と零集合に分割して)考慮外とし、お行儀のよいところだけ(正の測度を持つ部分集合だけ)値を与える($a_j$と掛け合わせる)ことで「お行儀のよい長方形」を作り、それを足し合わせて面積としようというのがルベーグの考えです。
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全体を極小の部分に分割し、全体を鮮やかに再構成する作法はフランスの根底を流れる思想だと感じます。カトリック教会のステンドグラスを通じで床に降り注ぐ光は、まさに関数の逆像です。
ルベーグより少し早く生まれた経済学者のワルラス(1834-1910)は極小無数の消費者と生産者が出会う場としての市場を分析しました。また画家のスーラ(1859-1891)は、点描の技法を確立しました。1875年生まれのルベーグは、こうした知的空気感の中で着想を得たのかもしれません…
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ルベーグ積分の存在
この積分が存在することは、関数$f(x)$を上下から単関数で挟み込むことによって確認できます。関数$f(x)$を上から抑える単関数を上積分といいます。上積分$\int^* f d\mu$は
$$\int^* f d\mu=\inf\left\{\int gd\mu | f\leq g すべての x\in E\right\}$$
そして、下積分$\int_* f d\mu$は
$$\int_* f d\mu=\sup\left\{\int gd\mu | f\geq g すべての x\in E\right\}$$
上2式の$\int gd\mu$は非負の値をとる単関数です。上積分=下積分のとき、ルベーグ積分の値が存在します。そして、その値が無限大に発散しないとき($\mathbb{R}_+$に収まるとき)、積分可能(可積分)といいます。
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このような話をするために、測度、可測集合、可測関数、正則、σ加法族、ボレル集合など細かい道具立てをそろえる必要があります。ここまで来ると、「ああ、このためだったのか」という感じになるのではないでしょうか。ボレル集合を知るためには、位相の知識が必要ですね… また少しずつ学んでみたいと思います。
2024年5月18日
上極限と下極限(Lebesgue Measure)
※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
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前回ファトゥの補題を概観したとき、上極限と下極限についておざなりにしてしまいました。この記事では、これらについて詳しくみます。
この記事は、以下のリンクを参照して作成しました。(理解の不十分さはすべて私の責任です。)
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集合の積と和
複数の集合いずれにも入っている要素の集まりを集合の積といいます。集合の記法を用いて表すと、2つの集合$A$と$B$の積は
$$A\cap B$$
抽象的でわかりにくいので、具体例を挙げます。$A$と$B$をそれぞれ次のようにおきます。
$$A=\{1, 2, 3, 4\} B=\{3, 4, 5, 6\}$$
$A$と$B$いずれにも入っている要素を集めると
$$A\cap B=\{3, 4\}$$
複数の集合に共通する要素を抜き出していますので、積は共通部分ともいいます。これに対して、複数の集合のいずれかに入っている要素の集まりを集合の和といいます。2つの集合$A$と$B$の和は次のように表記します。
$$A\cup B$$
$A$と$B$のいずれかに入っている要素を集めると
$$A\cup B=\{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$$
となります。積を表す記号$\cap$はcap🧢とも読み、選ばれたものだけが入るイメージです。和を表す記号$\cup$はcup☕️とも読み、すべてが入るイメージです。
集合族の積と下極限
集合を並べたものを集合族といいます。たとえば、次のように集合を10個並べたものは集合族です。
$$\{A_1, A_2, A_3, …, A_{10}\}$$
ここでは、次の3つの集合からなる族を考えます。
$$A_1=\{3\} A_2=\{3, 4\} A_3=\{3, 4, 5\}$$
$A_1$は$A_2$に含まれ、$A_2$は$A_3$に含まれます。入れ子構造になっていますね。これを集合論の記法で書くと
$$A_1\subset A_2\subset A_3$$
となります。まずは$A_2$と$A_3$の積をみましょう。
$$A_2\cap A_3=\{3, 4\}$$
2つの集合のいずれにも入っているのは3と4です。5は$A_2$に含まれませんので、積集合の要素になりません。つづいて、$A_1$、$A_2$、$A_3$の積をみましょう。上で求めた$A_2\cap A_3$を用いると
$$A_1\cap(A_2\cap A_3)=\{3\}\cap\{3, 4\}=\{3\}$$
$A_1$と$A_2\cap A_3$のいずれにも入っているのは3だけです。4は$A_1$に含まれませんので、積集合の要素になりません。よって、3つの集合の積は
$$A_1\cap A_2\cap A_3=\{3\}$$
まとめると
式1 $A_1\cap A_2\cap A_3=\{3\}$
式2 $A_2\cap A_3=\{3, 4\}$
式3 $A_3=\{3, 4, 5\}$
集合3つのとき要素は1つ、集合2つのとき要素は2つ、集合1つのとき要素は3つです。興味深いことに、積をとる集合の数が減るにしたがい要素の個数は増えます。式1, 2, 3の和集合をとると
$$\{3\}\cup\{3, 4\}\cup\{3, 4, 5\}=\{3, 4, 5\}$$
これを集合の記法を用いておしゃれに書くと
$$\bigcup_{j=1}^3\bigcap_{k=j}^3 A_k=\{3, 4, 5\}$$
なぜこんなにコンパクトに書けるのか、確かめましょう。まず$j=1$のとき、$k$ は1から3まで1, 2, 3の値をとります。3つの集合の積をとりますので、式1になります。つづいて$j=2$のとき、$k$ は2から3まで2と3の値をとります。後ろ2つの集合の積をとりますので、式2になります。 $j=3$のとき、$k$ は3だけをとります。これは$A_3$そのものですので、式3となります。上式は式1, 2, 3の和集合ですので
$$\bigcup_{j=1}^3\bigcap_{k=j}^3 A_k=式1\cup 式2 \cup 式3$$
$$=\{3\}\cup\{3, 4\}\cup\{3, 4, 5\}=\{3, 4, 5\}$$
となり、表記法が正しいことがわかりました。ここでは集合が3つの例を考えましたが、集合族を集合列(可算無限個の集合を並べたもの)に拡張すると
$$\bigcup_{j=1}^{\infty}\bigcap_{k=j}^{\infty} A_k$$
この式の$\bigcap_{k=j}^{\infty}$は積をとることを意味しています。可算無限個ある集合のいずれにも入っている要素だけを取り出して作る集合は、ある種最小の集合とみることができます。解析の記法では、最小を下限($\inf$)と書きます。
$\bigcup_{j=1}^{\infty}$は、下限を求める作業を1つめの集合から、2つめの集合から、3つめの集合から、…と無限に繰り返すことを意味しています。解析の記法では、添字を無限に飛ばすことを極限($\lim$)といいます。よって、集合の記法は、次のように解析の記法に置き換えられます。
$$\bigcup_{j=1}^{\infty}\bigcap_{k=j}^{\infty} A_k=\lim_{j\rightarrow\infty}\inf A_j$$
$j=3$までの例では集合の要素が1つずつ増えていますが、$j$が100とか1000になると集合の要素は増えなくなり、そのまま変わらなくなるかもしれません。そのような行先の集合を下極限といいます。私たちが数列の下極限で持っていたイメージと比べて、かなり抽象度が高いですよね…
集合族の和と上極限
上のlim infと対照をなすのが、lim supです。先ほどと同じ3つの集合からなる族を例に考えます。
$$A_1=\{3\} A_2=\{3, 4\} A_3=\{3, 4, 5\}$$
まずは$A_2$と$A_3$の和をみましょう。和とは2つの集合のいずれかに入っている要素を集める作業ですので
$$A_2\cup A_3=\{3, 4, 5\}$$
この結果を用いて、$A_1$、$A_2$、$A_3$の和をとりましょう。
$$A_1\cup(A_2\cup A_3)=\{3\}\cup\{3, 4, 5\}=\{3, 4, 5\}$$
よって、3つの集合の和は
$$A_1\cup A_2\cup A_3=\{3, 4, 5\}$$
まとめると
式1 $A_1\cup A_2\cup A_3=\{3, 4, 5\}$
式2 $A_2\cup A_3=\{3, 4, 5\}$
式3 $A_3=\{3, 4, 5\}$
下極限のときとは異なり、$A$が3つのとき、2つのとき、$A_3$だけのとき、すべてについて要素は3つです。式1, 2, 3の積をとると
$$\{3, 4, 5\}\cap\{3, 4, 5\}\cap\{3, 4, 5\}=\{3, 4, 5\}$$
これを集合の記法を用いて書くと
$$\bigcap_{j=1}^3\bigcup_{k=j}^3 A_k=\{3, 4, 5\}$$
この表記についても確認してみます。まず$j=1$のとき、$k$ は1から3まで1, 2, 3の値をとります。3つの集合の和をとりますので、式1になります。つづいて$j=2$のとき、$k$ は2から3まで2と3の値をとります。後ろ2つの集合の和をとりますので、式2になります。$j=3$のとき、$k$ は3だけをとります。これは$A_3$そのものですので式3となります。上式は式1, 2, 3の積集合ですので
$$\bigcap_{j=1}^3\bigcup_{k=j}^3 A_k=式1\cap 式2 \cap 式3$$
$$=\{3, 4, 5\}\cap\{3, 4, 5\}\cap\{3, 4, 5\}=\{3, 4, 5\}$$
となります。集合族を集合列に拡張すると
$$\bigcap_{j=1}^{\infty}\bigcup_{k=j}^{\infty} A_k$$
この式の$\bigcup_{k=j}^{\infty}$は和をとることを意味しています。可算無限個ある集合のいずれかに入っている要素をくまなく取り出して作る集合は、最大の集合とみることができます。解析の記法では、最大を上限($\sup$)と書きます。
$\bigcap_{j=1}^{\infty}$は、上限を求める作業を1つめの集合から、2つめの集合から、3つめの集合から、…と無限に繰り返すことを意味しています。解析の記法では、添字を無限に飛ばすことを極限($\lim$)といいます。よって、集合の記法は、次のように解析の記法に置き換えられます。
$$\bigcap_{j=1}^{\infty}\bigcup_{k=j}^{\infty} A_k=\lim_{j\rightarrow\infty}\sup A_j$$
$j=3$までの数値例では、集合の要素が変わらないまま推移しています。もしこの状態が無限の先まで続くのであれば、これが集合の上極限になります。
下極限と上極限の関係
一般に、lim inf はlim supの部分集合です。
$$\lim_{j\rightarrow\infty}\inf A_j\subset\lim_{j\rightarrow\infty}\sup A_j$$
上に掲げた$J=3$の数値例では、lim infの集合とlim supの集合が一致します。$J$が無限大に向かうとき、lim infの集合とlim supの集合が一致するとき、それを極限集合(limit set)といいます。
$$\lim_{j\rightarrow\infty}\inf A_j=\lim_{j\rightarrow\infty}\sup A_j=\lim_{j\rightarrow\infty}A_j$$
極限は存在するときとしないときがありますが、上極限と下極限は必ず存在します($\pm\infty$を含めて考える場合)。それで、極限の有無を調べるツールとしてこれらの概念が使われます。
2024年5月13日
収束、上極限、下極限、ファトゥの補題(Lebesuge Measure)
※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
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前回、σ加法族を紹介しました。今回はファトゥの補題を紹介します。これはとてつもなく難しいものですので、大まかなイメージを持てるところまでを目標にします。
収束と極限
数列の先のほうの値が変わらなくなるとき、収束する(converge)といいます。たとえば
$$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^j$$
という数列を書き表すと
$$\left\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^1, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^2, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^3, …\right\}$$
この数列は、2を境に上下しながら限りなく2に近づいてゆきます。このとき、この数列は2に収束するといいます。数列には、収束せずに発散する(diverge)ものや振動したまま(oscillate)のものもありますがこの記事では有限な値に収束する数列について考えます。また、数列を集合に見立てた$A_j$はすべての $j$ について可測とします。
上極限と下極限
数列が収束するとき、その数列の一部を抜き出して作成した部分列も収束します。そのようすをみるものを上極限といいます。上の数列を例にしましょう。もとの数列は
$$\left\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^1, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^2, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^3, …\right\}$$
これは2に収束します。この数列から偶数番の要素だけ取り出すと
$$\left\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^2, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^6, …\right\}$$
これは最小上界(上限)が上から2に向かい収束します。この数列から4の倍数番の要素だけ取り出すと
$$\left\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^8, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^{12}, …\right\}$$
これも最小上界(上限)が上から2に向かい収束します。このように、もとの数列から作成した部分列の収束先は、もとの数列の収束先と同じことを確かめられます。これは、各部分列の最小上界(上限)を集めてその極限をとる作業ですので、次のように表記できます。
$$a^*=\lim_{j\rightarrow\infty}\sup A_j$$
同様に、減衰曲線の下からの収束をみるときには、各周期の極小値からなる部分列を作り、そのようすをみるのが賢明です。たとえば、奇数番だけ取り出すと
$$\left\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^1, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^3, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^5, …\right\}$$
これは最大下界(下限)が下から2に向かい収束します。各部分列の最大下界(下限)を集めてその極限をとる作業は、次式のように表記できます。$a_*$は下極限です。
$$a_*=\lim_{j\rightarrow\infty}\inf A_j$$
上極限と下極限が存在するとき、次の式が成り立ちます。
$$\lim_{j\rightarrow\infty}\inf A_j\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\sup A_j$$
上極限$a^*$と下極限$a_*$が等しいとき、極限が存在するといいます。このとき、上の不等式は等号で成り立ちます。
集合の記法
集合の記法で上極限を表してみましょう。上の例を再び掲げると
$$A_1=\left\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^1, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^2, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^3, …\right\}$$
$$A_2=\left\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^2, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^6, …\right\}$$
$$A_3=\left\{2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^8, 2+\left(-\frac{1}{2}\right)^{12}, …\right\}$$
$A_1$の最小上界は$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^2$、$A_2$の最小上界は$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^2$、$A_3$の最小上界は$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4$です。これらのうち最小の$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4$は$A_3$の要素ですが、$A_1$の要素でもあり、$A_2$の要素でもあります。すなわち
$$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4\in A_1\cup A_2\cup A_3$$
であり、かつ
$$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4\in A_1\cap A_2\cap A_3$$
また同様に
$$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4\in A_2\cup A_3$$
であり、かつ
$$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4\in A_2\cap A_3$$
さらに
$$2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4\in A_3$$
つまり、収束先の候補は、最小上界の候補となる集合をすべて集め、そのいずれにも入っている要素だということになります(簡単化のためにこのようになる部分列を作成しました)。集合の記法では、候補をすべて集めることを$\bigcup$で、いずれにも入っていることを$\bigcap$で表します。よって
$$収束先の候補=2+\left(-\frac{1}{2}\right)^4\in A_3\subset\bigcap_{j=1}^{3}\bigcup_{n=j}^{3}A_n$$
調べる集合の数を増やすにしたがい、収束先の候補が絞り込まれるイメージです。3を3より大きい$J$に一般化すると、候補はさらに絞られます。
$$A_J\subset\bigcap_{j=1}^{J}\bigcup_{n=j}^{J}A_n$$
測度の単調性から
$$\mu(A_J)\leq\mu\left(\bigcap_{j=1}^{J}\bigcup_{n=j}^{J}A_n\right)$$
$J$を限りなく大きくすると(記述の煩雑さを避けるために$J$を $j$ に置き換えています)
$$\lim_{j\rightarrow\infty}\sup\mu(A_j)\leq\mu\left(\bigcap_{j=1}^{\infty}\bigcup_{n=j}^{\infty}A_n\right)$$
下極限は、上極限と対称をなしますので(と簡単に書くとお叱りを受けますが…)
$$\mu\left(\bigcup_{j=1}^{\infty}\bigcap_{n=j}^{\infty}A_n\right)\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\inf\mu(A_j)$$
※集合の記法はとても難しいです。こちらを参照しました。
こちらは英語ですが、とてつもなくhelpfulです。
ファトゥの補題
ここまでの結果をまとめると、数列の上極限と下極限を集合の上極限と下極限ではさみこむことができます。すなわち、$\mu(\bigcup_{j=1}^{\infty}A_j)$が有限であるとき、次の不等式が成り立ちます。
$$\mu\left(\bigcup_{j=1}^{\infty}\bigcap_{n=j}^{\infty}A_n\right)\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\inf\mu(A_j)$$
$$\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\sup\mu(A_j)\leq\mu\left(\bigcap_{j=1}^{\infty}\bigcup_{n=j}^{\infty}A_n\right)$$
これを極限の記法で書くと
$$\mu(\lim_{j\rightarrow\infty}\inf A_j)\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\inf\mu(A_j)$$
$$\qquad\qquad\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\sup\mu(A_j)\leq\mu(\lim_{j\rightarrow\infty}\sup A_j)$$
この結果をファトゥの補題(Fatou's lemma)といいます。(志賀浩二『ルベーグ積分30講』p.83)
「ファトゥの補題はルベーグ積分に関するもので、集合に関するものではない」と言われるかもしれません。この後少しずつ学ぶと見えてくると思いますが、ルベーグ=カラテオドリの測度はそのままルベーグ積分です。積分の記法で書くと(志賀浩二『ルベーグ積分30講』p.155は積分表記をファトゥの不等式と呼び、単調収束定理を用いて証明しています。詳細な証明は『数の落とし子』の方が説明されています。今の私にはとても追いきれませんでしたが… こちらもあわせて参照しました。)
$$\int\lim_{j\rightarrow\infty}\inf f_j d\mu\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\inf\int f_j d\mu$$
$$\qquad\qquad\leq\lim_{j\rightarrow\infty}\sup\int f_j d\mu\leq\int\lim_{j\rightarrow\infty}\sup f_j d\mu$$
積分は測度の一形態であるとは、ルベーグの慧眼です。
2024年5月8日
σ加法族(Lebesgue Measure)
※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
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前回は集合族の測度についてみました。今回は、σ加法族について紹介します。
本格的に確率を学びたいと思って専門書を開くと、たいがい1ページ目にσ加法族が登場します。私たちの大半は、この用語を見た瞬間に頭が真っ白になり、開いたばかりの本を閉じ、図書館の書棚にそっと返してしまいます。この段階をなんとか超えたいな、と思います。
べき集合
集合$A$の要素からなるすべての部分集合の集まりをべき集合(power set) といい、$2^A$と表記します。2の$A$乗と書くのは、$A$の要素の数が$A$個あるとき、べき集合の要素の数は$2^A$個存在するためです。
コイントスの結果、表が出ることを1、裏が出ることを2としましょう。これは、2つの要素からなる集合として表記できます。
$$A=\{1, 2\}$$
$A$のべき集合は
$$2^A=\{\varnothing, 1, 2, \{1, 2\} \}$$
確かに要素の数は$2^A=2^2=4$個あります。集合の要素の数が3なら8、4なら16の要素がべき集合にあります。
σ加法族
準備が整いましたので、σ加法族を定義します。集合$X$のべき集合 $2^X$を$\mathcal{F}$とおき、$A$を$\mathcal{F}$の任意の要素とします。このとき、次の条件を満たす$\mathcal{F}$をσ加法族(σ-field, σ-algebra)といいます。
- $\varnothing\in\mathcal{F}$
- $A\in\mathcal{F} \implies A^c\in\mathcal{F}$
- $\{\boldsymbol{A}_j\}\subset\mathcal{F} \implies \bigcup_{j=1}^{\infty}A_j\in\mathcal{F}$
1つめは、空集合が$\mathcal{F}$の要素であるということです。上のコイントスの例でも、べき集合の要素に空集合がきちんと入っています。
2つめは、これが$\mathcal{F}$の要素ならこれ以外も$\mathcal{F}$の要素だということです。コイントスの例では「表が出る:1」と「裏が出る:2」はともに$\mathcal{F}$の要素です。同様に「表か裏が出る: $\{1, 2\}$」と表も裏も出ない、すなわち「空集合:$\varnothing$」はともに$\mathcal{F}$の要素です。
3つめは、可算無限の集合列の要素すべてが$\mathcal{F}$の要素なら、その和集合も$\mathcal{F}$の要素だということです。コイントスの例は有限集合ですが、気持ちだけ眺めると…
$$\{\varnothing, 1, 2, \{1, 2\} \}$$
のすべての要素の和集合は$ \{1, 2\}$です。これは明らかに$\mathcal{F}$の要素です。
条件2と条件3を用いれば、$\bigcap_{j=1}^{\infty}A_j$も$\mathcal{F}$の要素だと確かめられます。条件2から、$A\in\mathcal{F}$なら$A^c\in\mathcal{F}$です。条件3から、その和集合も$\mathcal{F}$の要素です。すなわち
$$\{\boldsymbol{A}_j^c\}\subset\mathcal{F} \implies \bigcup_{j=1}^{\infty}A_j^c\in\mathcal{F}$$
再び条件2から
$$\left(\bigcup_{j=1}^{\infty}A_j^c\right)^c=\bigcap_{j=1}^{\infty}A_j\in\mathcal{F}$$
σ加法族は、測る場としてよい性質を持っています。コイントスの例では、表が出る確率、裏が出る確率、表か裏が出る確率、表も裏も出ない確率、起こりうる事象すべてを確率の計測対象にできます。確率を測る場として心地よいです。
確率などを測れる場という意味で、集合$F$から生成されたσ加法族$\mathcal{F}$を可測空間(measurable space)といい、$(F, \mathcal{F})$と表記します。確率論の専門書によく$(\Omega, \mathcal{F}, P)$と書いてありますが、これは可測空間を確率測度$P$で測ること意味しています。
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σ加法族の生成
もとの集合$F$からσ加法族を作成することもできます。集合$F$から最小のσ加法族を作成する作業を生成(generate)といいます。集合$F$から生成されたσ加法族を$\sigma(F)$と表記します。
上で用いたコイントスの例を少しだけ拡張してみましょう。コインを2回投げた結果は次の4とおりです。
$4=\{表, 表\}$
$3=\{表, 裏\}$
$2=\{裏, 表\}$
$1=\{裏, 裏\}$
それぞれに4から1までの番号をつけました。これらを集めた集合$F$は次のようになります。
$$F=\{1, 2, 3, 4\}$$
この集合から生成されるσ加法族$\sigma(\{1, 2\})$は
$$\sigma(\{1, 2\})=\{\varnothing, F, \{1, 2\}, \{3, 4\}\}$$
となります。これがσ加法族であることを確かめましょう。この記事のはじめに書いた3条件のうちの1つめは、空集合がσ加法族の要素であるということです。空集合は確かに$\sigma(\{1, 2\})$の要素です。
3条件のうちの2つめは、補集合がσ加法族の要素であるということです。ここまでで$\sigma(\{1, 2\})$の要素になっているのは$\{\{1, 2\}, \varnothing\}$です。これらの補集合はそれぞれ
$$\{1, 2\}^c \implies \{3, 4\}$$
$$\varnothing^c \implies F$$
確かにこれらも$\sigma(\{1, 2\})$の要素です。3条件のうちの3つめは、生成されたσ加法族のすべての要素の和集合が$\sigma(\{1, 2\})$の要素であるということです。
$$F=\varnothing\cup F\cup\{1, 2\}\cup\{3, 4\}$$
は明らかです。よって、3条件すべてを満たす$\sigma(\{1, 2\})$は集合$E$から生成されたσ加法族だといえます。
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とりかかりは、これくらいでいいかなと思います。ボレル集合族はあまりに壮大ですので…
ルベーグ測度の世界では零集合が決定的な役割を果たすように思います(志賀浩二『ルベーグ積分30講』pp.52-53)。おおげさかもしれませんが、虚数単位 $i$ と同じくらいの役割を果たしていそうです。そのうちだんだんみえてくるでしよう…
可測集合族の測度(Lebesgue Measure)
※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
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素集合
素(disjoint)とは、重なっていないということです。たとえば、神奈川県と秋田県は地図上で重なっていません。「この番地は神奈川県であり、秋田県でもあります」というところはないはずです。集合$A$と$B$の両方に入る要素が1つもないことを互いに素といい、そのような集合を素集合(disjoint sets)といいます。式で書くと
$$A\cap B=\varnothing$$
$A$と$B$が可測であるとき、素集合の測度は$A$の測度と$B$の測度の和と等しくなります。
$$\mu(A\cup B)=\mu(A)+\mu(B)$$
神奈川県と秋田県を合わせた面積は、神奈川県の面積と秋田県の面積の和に等しいという、私たちの感覚に合う結論が測度の世界でも得られます。
集合族
つづいて、集合を有限個並べて集合にしたもの$\{A_1, A_2, A_3, …, A_J\}$について考えます。こうしたものを集合族(familiy of sets)といいます。すべての要素が可測集合である集合族の和集合と積集合は、ともに可測です。すなわち
$$\bigcap_{j=1}^JA_j \bigcup_{j=1}^JA_j$$
はともに可測です。すべての$j\neq k$について$A_j\cap A_k=\varnothing$であれば、和集合の測度は完全加法性を満たします。すなわち
$$\mu\left(\bigcup_{j=1}^JA_j\right)=\sum_{j=1}^J\mu(A_j)$$
47都道府県からなる日本国の面積は各都道府県の面積の和であるというこの結論は、私たちの感覚に合います。数学は難しいものではありますが、奇を衒った突拍子もないものではありません。大半は極めて常識的なものです。
集合列
さらに、集合を可算無限個並べた集合$\{A_1, A_2, A_3, …\}$に拡張しましょう。こうしたものを集合列(sequence of sets)といいます。すべての$j\neq k$について$A_j\cap A_k=\varnothing$であれば、可測な集合列の和の測度も完全加法性を満たします。すなわち
$$\mu\left(\bigcup_{j=1}^{\infty}A_j\right)=\sum_{j=1}^{\infty}\mu(A_j)$$
集合列の要素がどんどん大きくなるとき、すなわち、すべての $j$ について $A_j\subset A_{j+1}$であるとき、単調増加な集合列といいます。この和の測度は最後の、つまり最大の要素の測度に収束します。
$$\mu\left(\bigcup_{j=1}^{\infty}A_j\right)=\lim_{j\rightarrow\infty}\mu(A_j)$$
ある人の居住地を最も小さな単位で表すと、「5階1号室に住んでいます」などとなります。1段階大きなくくりでは「〇〇マンションに住んでいます」、くくりを少しずつ大きくしてゆくと「△△市に住んでいます」「××県に住んでいます」「日本国に住んでいます」「地球に住んでいます」…となります。最後の一番大きなくくりにそれまでのくくりすべてが含まれています。単調増加とはこういう状況です。
単調増加な集合列と対をなすのが単調減少な集合列です。これは、要素がどんどん小さくなる、つまりすべての $j$ について$A_{j+1}\subset A_j$であるような集合列です。この積の測度は最後の、つまり最小の要素の測度に収束します。
$$\mu\left(\bigcap_{j=1}^{\infty}A_j\right)=\lim_{j\rightarrow\infty}\mu(A_j)$$
ただし、$\mu(A_1)$は有限とします(最小の要素の測度になるのだから、この条件は不要にみえますが、証明の過程で必要となります)。この式は上式とよく似ていますが、上式は和$\bigcup$、この式は積$\bigcap$であることに注意しましょう。
玉ねぎ🧅を横で輪切りにすると同心円状にリングが重なっていますよね。リングを外側から1枚ずつ取り除いてゆくと、最後に一番小さな真ん中だけが残ります。単調減少とはそんなイメージです。
2024年5月7日
空集合、全体集合、零集合、補集合、和集合、積集合の可測性(Lebesgue Measure)
※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
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空集合と全体集合
空集合$\varnothing$と全体集合$X$は可測です。これは、可測性の定義式にこれらを代入してすぐ確かめられます。
$$\mu(E\cap \varnothing)+\mu(E-\varnothing)=\mu(\varnothing)+\mu(E)=\mu(E)$$
$$\mu(E\cap X)+\mu(E-X)=\mu(E)+\mu(\varnothing)=\mu(E)$$
零集合
最小の測度を持つ要素、もしくはその集まりを零集合(null set)といいます。零集合の可測性を調べてみましょう。
$$\mu(E\cap A)+\mu(E-A)\leq\mu(A)+\mu(E)=\mu(E)$$
第1項は最小の測度を持つ零集合と任意の集合の積が零集合であることから、第2項は集合から集合を引いた結果がもとの集合以下であることから、このように変形できます。最右の等式は$\mu(A)=0$(最小の測度は0というのが測度の基本性質)であることから得られます。上式の最左と最右に注目すると
$$\mu(E\cap A)+\mu(E-A)\leq\mu(E)$$
これは、前回紹介した可測性の弱い条件ですので、可測性が確認できました。空集合も零集合ですので可測です。
補集合
集合$X$の部分集合$A$に対して、$A$ではないものを補集合といい、$A^c$と表記します。いわゆる、ではないほうが補集合です。$A$が可測であるとき、$A^c$の可測性を調べましょう。
$$\mu(E\cap A^c)+\mu(E-A^c)=\mu(E-A)+\mu(E\cap A)$$
第1項は「ではないほうと重なる」と「であるほうを除く」が同じであることから、第2項は「ではないほうを除く」と「であるほうと重なる」が同じであることから、このように変形できます。右辺の第1項と第2項を入れ替えると
$$\mu(E\cap A)+\mu(E-A)$$
これはとりもなおさず可測性の定義式です。
$$\mu(E)=\mu(E\cap A)+\mu(E-A)$$
右辺の各項を補集合の表記に戻せば、補集合の可測性が確認できます。
$$\mu(E)=\mu(E\cap A^c)+\mu(E-A^c)$$
和集合と積集合
集合$X$の部分集合$A, B$の和集合とは、集合$A$または$B$に入る要素すべての集まりであり、$A\cup B$と表記します。積集合とは、集合$A$と$B$の両方に入る要素すべての集まりであり、$A\cap B$と表記します。和集合はまたは、積集合はかつですので
$$A\cap B\subset A\cup B$$
となります。可測である集合$A$と$B$の和集合の可測性を調べましょう。可測性の定義式は
$$\mu(E)=\mu(E\cap A)+\mu(E-A)$$
$B$が可測であることを用いて$\mu(E-A)$を測ると
$$\mu(E-A)=\mu((E-A)\cap B)+\mu((E-A)-B)$$
これを上式の右辺第2項に代入すると
$$\mu(E)=\mu(E\cap A)+\mu((E-A)\cap B)+\mu((E-A)-B)$$
右辺第3項の形を少し変えると、項の中に和集合が現れます。
$$\mu(E)=\mu(E\cap A)+\mu((E-A)\cap B)+\mu(E-(A\cup B))$$
この式を式(*)とおきましょう。右辺の第1項と第2項は、和集合の可測性の定義式の第1項 $\mu(E\cap (A\cup B))$と何らか比べられるべきです。少しトリッキーですが、この集合を次のように変形します。
$$E\cap (A\cup B)=(E\cap A)\cup(E\cap B)$$
$$\qquad\qquad\qquad\qquad=(E\cap A)\cup((E-A)\cap B)$$
劣加法性から
$$\mu(E\cap (A\cup B))=\mu((E\cap A)\cup((E-A)\cap B))$$
$$\qquad\qquad\qquad\quad\leq\mu(E\cap A)+\mu((E-A)\cap B)$$
これは、この式の最左辺が、式(*)の右辺第1項と第2項の和より小さいことを意味します。式(*)の右辺第1項と第2項が最右辺であれば等式が成立しますから、それより小さい左辺を代入すれば、関係は$\geq$になります。すなわち
$$\mu(E)\geq\mu(E\cap(A\cup B))+\mu(E-(A\cup B))$$
この式は、可測集合$A, B$の和集合が可測であることの定義式です。
さいごに、可測集合$A, B$の積集合の可測性を調べましょう。補集合と和集合はすでに可測であることが確かめられていますので、次のような変形から可測であることが示されます。
$$(A^c\cup B^c)^c=A\cap B$$
私たちがよくみかける集合について、可測性が確認できました。
ジョルダン、ルベーグ、カラテオドリ(Lebesgue Measure)
※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。
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- ルベーグ測度:測る
- ベクトル空間:計算する
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私たちは、日常生活の中でいろいろなものを測っています。距離を測ったり、面積や体積を測ったり、重さを測ったり、個数を測ったり、気温を測ったり、高度を測ったり、濃度を測ったり、照度を測ったり、彩度を測ったり、比率を測ったり、確率を測ったりします。こうしたことができるのは、測りかたのルールがきちんと定まっているためです。
フランス人のルベーグ(Henri Léon Lebesgue:1875-1941)という人は、測りかたを深く探究した数学者です。1789年大革命でメートル法を提唱したフランスの伝統は、この人の理論に息づいているのでしょう。
こちらの記事によれば、メートル法以前には800とおりもの測りかたがあったようです…
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内測度と外測度
入り組んだ形をした敷地の面積を近似することを考えます。
まず、敷地の境界にかからないように有限個のタイルを敷地内側に敷き詰め、そのタイルの面積の総和で敷地面積を近似する方法があります。これを内測度(inner measure)といいます。もうひとつ、敷地の境界にほんのわずかだけかかるように有限個のタイルを敷き詰め、そのタイルの面積の総和で敷地の面積を近似する方法があります。これを外測度(exterior measure, outer measure)といいます。
内測度の上限と外測度の下限が等しいことを可測(measurable)といいます。
ジョルダンの測度
敷き詰めるタイルが大きいとき、内測度は外測度より小さくなります。1m四方のタイルは、曲線を描く敷地にピッタリ敷き詰められず、隙間ができます。これを敷地境界にかかるように敷き詰めると、大きくはみ出します。
敷地へのフィット感を高めるために、タイルを50cm四方、10cm四方、5cm四方、1cm四方、…とどんどん小さくしてみましょう。とてつもなく変な形をした敷地でない限り、あるところで内測度の上限と外測度の下限が一致します。この可測な敷地の面積をジョルダン測度(Jordan measure)といいます。
ルベーグの測度
ジョルダンは、敷地に有限個のタイルを敷き詰めることを考えました。この考えを拡張して、敷地に可算無限個のタイルを敷き詰めることを考えたのがルベーグです。
敷き詰めるタイルの枚数を可算無限個へ拡張すると、ジョルダン不可測な敷地の面積も測れるようになります。ここでは、1m四方の正方形から、縦横ともに有理数の値をもつ可算無限個の点(有理点)をすべて除いた図形を例にします(志賀浩二『ルベーグ積分30講』p.41, 図13)。極小・無数の穴が空いた1m四方のメッシュのイメージです。
ジョルダンの方法にはタイルが有限個しかありませんので、可算無限個の穴すべてをカバーできません。ルベーグの方法にはタイルが可算無限個用意されていますので、穴すべてをカバーできます。極小のタイルでカバーした穴それぞれの面積を0とみると、それを可算無限個足し合わせた面積も0になります。すると、このとてつもなく変な形をした敷地の面積は1平方メートルと0の差、1平方メートルとなります。
$$外側から測った正方形の面積-可算無限個の穴の面積総計$$
$$=1-0=1$$
(志賀浩二『ルベーグ積分30講』p.99は、閉包と内点集合が一致しないときジョルダンの測度が機能せず、ルベーグ測度が有用になると指摘しています。)
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ルベーグの考えをまとめましょう。 $j(.), m_*(.), m^*(.)$をそれぞれ、ジョルダン測度、ルベーグ内測度、ルベーグ外測度とします。このとき集合$A$のルベーグ内測度$m_*(A)$は、ジョルダン可測な大枠$E$と、$E$から$A$を除いた部分($E-A$の外測度)の差となります。すなわち
$$m_*(A)=j(E)-m^*(E-A)$$
集合$A$の中心部からきわへ向かって外測度の上限をとり、$A$の外側を塗りつぶすと$A$が浮かび上がるイメージです。ルベーグ可測であるとき、内測度と外測度は等しくなります。よって
$$m^*(A)=j(E)-m^*(E-A)$$
* * *
カラテオドリの可測
上式の右辺にある$m^*(E-A)$を移項して、左右入れ替えると
$$j(E)=m^*(A)+m^*(E-A)$$
$A$が可測であるとき$j(E)=m^*(E)$であり、また$A$が$E$の部分集合であることに注目すると$m^*(A)=m^*(E\cap A)$が成り立ちます。これらを代入すると
$$m^*(E)=m^*(E\cap A)+m^*(E-A)$$
ルベーグの外測度$m^*(.)$を$\mu(.)$に置き換えると
$$\mu(E)=\mu(E\cap A)+\mu(E-A)$$
すべての$E$についてこの式が成り立つとき、$A$は可測であるといいます。このように表現するのは、もともと$A$の可測性を示す式を変形して得られた式であるためです。上式は次のようにも書けます。$A^c$の可測性については次回説明します。
$$\mu(E)=\mu(E\cap A)+\mu(E\cap A^c)$$
この式は、$A$に含まれるものと含まれないものに$E$を二分して測った測度の和が、$E$の測度に等しいことを示しています。距離空間でもデデキントの定理、ベールのカテゴリー定理、可分性など全体を二分する話が出てきました。数学では「これとこれ以外」という分けかたが認識の基礎になっているようです。この可測の条件は、ルベーグと同じ世代のギリシャ人数学者、カラテオドリ(Constantin Carathéodory)が提示しました。それで、カラテオドリの条件といいます。
* * *
カラテオドリ測度の性質
カラテオドリの外測度(exterior measure, outer measure)には次のような性質があります。
- $0\leq\mu(A)\leq\infty$
- $\mu(\varnothing)=0$
- $A\subset E \implies \mu(A)\leq\mu(E)$
- $A\subset\bigcup_{j=1}^{\infty}A_j \implies \mu(A)\leq\sum_{j=1}^{\infty}\mu(A_j)$
記号ばかりですので説明を加えます。まず1ですが、測度はマイナスの値をとりませんが、無限大まで大きな値はとりうるということです。
つづいて2ですが、これは空集合$\varnothing$を測った値を0とするということです。空集合とは、何も載っていないお皿🍽️のイメージです。お皿に何か載っている🍛のであれば、カロリーを測ったり、重さを測ったり、大きさを測ったりできますが、何も載っていなければ測りようがありません。そうしたものの値は0にするということです。条件1で測度の下限を0にしましたが、これは空集合の測度を0と定義することによります。
3は単調性(monotonicity)といわれる性質です。より大きなものにより大きな値を与えるという測度の性質です。たとえば、東京都より日本国のほうが大きいので、東京都の面積より日本国の面積のほうが広いと評価するということです。もし「東京都の面積より日本国の面積のほうが狭いです」と言われると、私たちは「えっ?」となってしまいます。「他も含めた敷地の面積はもとの敷地の面積より広くなる」という、私たちの常識的な感覚と合う測度の性質が単調性です。
4は劣加法性(subadditivity)といわれる特徴です。外測度を測るとき、敷き詰めるタイルが重なっていても構いません。また、境界にかかるようにタイルを敷き詰めます。それで、敷き詰めたタイルそれぞれの面積の合計は敷地面積以上になります。距離空間には三角不等式がありました。これは、ゴールに真っ直ぐ突き進むより、どこかに立ち寄ったほうが距離は長くなるという性質です。この特徴を、より一般的な測度の世界でも保つということです。
条件4を用いると、可測の条件を弱く表現できます。
$$\mu(E)\geq\mu(E\cap A)+\mu(E\cap A^c)$$
なぜかというと、逆向きの不等式($\leq$)は条件4そのものだからです。
* * *
一般的理論に還元されてしまうと、数学は内容のない単なる美しい形式になってしまう。そしてそれはすぐに死にたえてしまう
(ルベーグの言葉を引用したメルツバッハ=ボイヤー『数学の歴史』からの引用を引用した志賀浩二『ルベーグ積分30講』数学30講シリーズ, 9, 朝倉書店, 1991, p.38)
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