2020年4月11日

ルート関数

今回はルート関数です。少し変わったタイプの関数ですが、慣れればそれほど難しいものではありません。苦手な人にみてもらえると嬉しいです。

目次
  1. 指数の性質
  2. ルート関数
  3. ルート関数の微分
  4. グラフ

この記事を動画にしてみました。あわせてご覧ください。

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(数式の部分、スマホから見ると文字化けしてしまうかもしれません。TeX系の宿命です。申し訳ないです…)


1 指数の性質

ルート関数を理解するのに必要な指数の性質を紹介します。

指数の和 $x^px^q=x^{p+q}$
$\frac{1}{2}$ 乗  $x^\frac{1}{2}=\sqrt{x}$
$-1$ 乗  $x^{-1}=\frac{1}{x}$

これらの性質については、この記事の一番下で説明します。興味のある人はみてください。そこまで興味がない人は、公式として暗記しましょう。

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2 ルート関数

ルート関数とは、$x$ がルートの中に入っている関数です。一般には、次のように書きます。

$$y=a\sqrt{bx+c}$$

ここでa、b、c は定数です。$a=3$、$b=1$、$c=1$ のとき、ルート関数は

$$y=3\sqrt{x+2}$$

数のフィールドを実数とするとき、ルートの中はマイナスをとれませんので、$x\geq-2$ という条件がつきます。下図はルート関数のグラフです。$x<-2$ では、この関数は定義されません。また、定数 $a$ がプラスの値を取っていますから、$y$ はマイナスの値を取りません。このルート関数は、点 $(0,-2)$ から右上に向かって進む曲線で表されます。


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3 ルート関数の微分

上で例として用いたルート関数を微分して、導関数を求めましょう。

$$y=3\sqrt{x+2}$$

記事のはじめに示したように、ルートは $\frac{1}{2}$ 乗です。よって

$$y=3(x+2)^\frac{1}{2}$$

$x$ と $3(x+2)^\frac{1}{2}$ の関係は次のように表せます。$x$ がかすかに動くと $x+2$ が動きます。$x+2$ が動くと $y$ も動きます。

$$x\to (x+2)\to y$$

この連動に注意して微分します。ルート関数は複雑にみえますが、手順はn次関数の微分と同じです。

a $x$ の肩に乗っている(べき)指数という重荷をおろす
b 重荷を1回おろしたことを記録する
c 式をきれいにする

まず、肩の重荷をおろします(a)。

$$\frac{1}{2}3(x+2)^{\frac{1}{2}}$$

つづいて、重荷を1回おろしたことを記録します(b)。

$$\frac{1}{2}3(x+2)^{\frac{1}{2}-1}$$

$x$ と $(x+2)$ は連動しているので

$$\frac{1}{2}3(x+2)^{-\frac{1}{2}}\times((x+2)を x で微分)$$

$(x+2)$ を $x$ で微分すると1になります。よって

$$\frac{1}{2}3(x+2)^{-\frac{1}{2}}\times 1$$











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これをきれいにすれば微分の完成です(c)。$\frac{1}{2}$ 乗はルートに、$-1$ 乗は分母になることに注意して

$$\frac{3}{2}(\sqrt{x+2})^{-1}$$
$$\frac{3}{2}\frac{1}{\sqrt{x+2}}$$





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4 グラフ

下図はルート関数とその微分のグラフです。微分の式に $x$ がありますので、増えかたは $x$ の値によって変わります。 $x$ が下限の $-2$ にとても近いとき、関数の値は急増します。$x$ の値が大きくなるにしたがい、微分の値は小さくなり、増えかたはゆっくりになります。これは $x$ が微分の式の分母にあるためです。 




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補論 指数の性質について

この記事のはじめに紹介した指数の3つの性質について説明します。

a 指数の和 $x^px^q=x^{p+q}$
b $\frac{1}{2}$ 乗  $x^\frac{1}{2}=\sqrt{x}$
c $-1$ 乗  $x^{-1}=\frac{1}{x}$

まず、aからみましょう。$x^p$ は $x$ を $p$ 回掛けたものです。$x^q$ は $x$ を $q$ 回掛けたものです。$p=2、q=3$ とすると

$$x^2x^3=(x\times x)\times (x\times x\times x)$$

合わせて $x$ を5回掛けていることがわかります。よって

$$x^2x^3=(x\times x)\times (x\times x\times x)=x^5=x^{2+3}$$

2を $p$、3を $q$ にもどすと

$$x^px^q=x^{p+q}$$

私たちの目的にはこれで十分です。つづいて、性質bです。ルートは $\frac{1}{2}$ 乗で表されます。2乗するとルート記号の中の数になるというのがルートですから

$$\sqrt{x}\sqrt{x}=x$$

ルートを指数 $x^a$ で表せるとしましょう。左辺を置き換えると

$$\sqrt{x}\sqrt{x}=x^ax^a=x^{a+a}=x^{2a}$$

右辺は $x=x^1$ と表されます。左辺と右辺を合わせると

$$x^{2a}=x^1$$

左辺は「$x$ を $2a$ 回掛ける」こと、右辺は「$x$ を1回掛ける」ことを意味します。これが等号で結ばれるためには、$2a=1$ が成り立たなければなりません。よって

$$a=\frac{1}{2}$$

これを代入すると

$$\sqrt{x}=x^a=x^{\frac{1}{2}}$$

さいごに性質 c をみましょう。性質 a の $p と q$ を $p=2、q=-1$ とおきます。すると

$$x^2x^{-1}=x^{2+(-1)}=x$$

また、$x^{-1}=s$ とおくと

$$x^2x^{-1}=x^2s$$

2つの結果を等号で結ぶと

$$x=x^2s$$

$s$ について解くと

$$s=\frac{x}{x^2}=\frac{1}{x}$$

性質 c が成り立つことが示されました。