目次
- ネイピア数とは
- 底が e の対数関数
- 底が e の指数関数
- 対数と指数の関係
この記事を動画にしてみました。あわせてご覧ください。
* * *
(数式の部分、スマホから見ると文字化けしてしまうかもしれません。TeX系の宿命です。申し訳ないです…)
1 ネイピア数とは
ネイピア数 e の「ネイピア」は、対数を発見したといわれるジョン・ネイピア(1550-1617)という人の名前です。ネイピア数は、ネイピアの考えをもとに、ヤコブ・ベルヌーイ(1654-1705)が計算したとされています。記号 e はレオンハルト・オイラー(1707-1783)が使いはじめたようです。200年くらいの時間、3人の天才によって熟成されてきたのがネイピア数です。
ネイピア数は、次に示すように、小数点以下無限に続く数です。
e=2.7182818284...
前々回、n次関数の微分はa、b、cの3段階でできると説明しました。対数関数の微分は、この3段階が使えないので難しいです。それで、難しい微分を楽にする特別な対数の底を考えることにしました。これが e です。

2 底が e の対数関数
とても大胆な発想ですが、対数の微分が \frac{1}{x} になるような対数の底を考えます。すなわち
(log_ax)'=\frac{1}{x}
となる a を考えます。このように定義した a がどんな値を取るか、微分の定義式を使って調べてみましょう。微分の定義式は
\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}
この式は、x がかすかに(0に限りなく近い h だけ)動いたとき、関数の値がどれほど動くか(分子の引き算)を表しています。この定義式の分子に対数関数を代入すると
\lim_{h\to 0}\frac{log_a(x+h)-log_ax}{h}
下図は、この定義式と \frac{1}{x} の値を比べたものです。定義式と \frac{1}{x} の値が等しくなるのは a の値が2.7182818284... のときです。この a を e と定義します。

* x=10 としてプロットした。e の値は x の値によらない。
e を底とする対数を自然対数といいます。自然対数の関数は次のように表記されることがあります。
y=log_{e}x\equiv \ln x
この対数関数の微分は、定義から
y'=\frac{1}{x}
下図は y=\ln x と y' のグラフです。関数の特徴をいくつか示します。
x<0 のとき、y と y' は定義できない
x\to 0 のとき、y\to -\infty、y'\to +\infty
x=1 のとき、y=0、y'=1
x の値が0にとても近いとき、y の値は -\infty にとても近くなります。-\infty はとてつもなく小さな数です。x が0近傍からわずかに増えると y の値は想像を絶するほど増えます。宇宙の谷底から光速でグワッと浮き上がってくるイメージです。x=1 のとき、自然対数の値は0、微分の値は1となります。x>1 のとき、微分の値は1より小さくなります。x の値がとても大きいとき、微分の値は0にとても近くなります。y の値はとてもゆっくり増えるようになります。

(動画で無限小と言ってしまっていますが、正しくはマイナス無限大です…)
* * *
3 底が e の指数関数
つづいて、底が e の指数関数を考えます。なんとも不思議なことに、底が e の指数関数の微分は微分前の関数と全く同じです。
y=e^x、 y'=e^x
下図は y=e^x と y'=e^x のグラフです。関数の特徴を示します。
x=0 のとき、y=1、y'=1
x=1 のとき、y=e、y'=e
指数関数は、すべての x の値について y と y' を定義できます。x の値がとても小さいとき、y と y' はいずれも0にとても近い値を取ります。x の値が1を超えると y と y' はいずれも急増します。x の値がとても大きいとき、y と y' はいずれもとても大きな値を取ります。

e を底とする関数の微分が関数自身になることを、微分の定義式を使って確かめましょう。微分の定義式は
\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}
この定義式の分子に a を底とする指数関数を代入すると
\lim_{h\to 0}\frac{a^{x+h}-a^x}{h}
下図は、この定義式と 微分の値 e^x の値を比べたものです。定義式と e^x の値が等しくなるのは a の値が2.7182818284... のときです。

e は、対数関数の微分の値が \frac{1}{x} となるような対数の底、かつ指数関数の微分の値が e^x となるような底です。とても不思議で面白いですね。
4 対数と指数の関係
対数と指数は互いに逆関数の関係にあります。まず、指数から対数の関係をみましょう。指数関数 y=e^x について、x=2 のときの y の値は
y=e^2=7.389...
この値を対数関数 x=\ln y に代入すると
y=\ln 7.389=2
不思議なことにはじめの数、2に戻りました。このように数がもとに戻る関数のペアを逆関数といいます。さらに、得た y の値 2を指数関数に代入すると
y=e^2=7.389...
7.389...という値に戻ります。したがって、対数から指数をみても、逆関数の関係にあります。この結果をもとに
y=ln e^y、 x=e^{ln x}
という関係が導かれます。

今回は、とてつもなく不思議な数 e についてでした。このように e を定義すると、対数と指数の微分がとても楽になります。この点については次回以降みることにしましょう。
ネイピア数の詳細はこちらを。イメージをひろげましょう!
https://www.youtube.com/watch?v=m2MIpDrF7Es
https://www.youtube.com/watch?v=sULa9Lc4pck
ネイピア数 e の「ネイピア」は、対数を発見したといわれるジョン・ネイピア(1550-1617)という人の名前です。ネイピア数は、ネイピアの考えをもとに、ヤコブ・ベルヌーイ(1654-1705)が計算したとされています。記号 e はレオンハルト・オイラー(1707-1783)が使いはじめたようです。200年くらいの時間、3人の天才によって熟成されてきたのがネイピア数です。
ネイピア数は、次に示すように、小数点以下無限に続く数です。
e=2.7182818284...
前々回、n次関数の微分はa、b、cの3段階でできると説明しました。対数関数の微分は、この3段階が使えないので難しいです。それで、難しい微分を楽にする特別な対数の底を考えることにしました。これが e です。

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2 底が e の対数関数
とても大胆な発想ですが、対数の微分が \frac{1}{x} になるような対数の底を考えます。すなわち
(log_ax)'=\frac{1}{x}
となる a を考えます。このように定義した a がどんな値を取るか、微分の定義式を使って調べてみましょう。微分の定義式は
\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}
この式は、x がかすかに(0に限りなく近い h だけ)動いたとき、関数の値がどれほど動くか(分子の引き算)を表しています。この定義式の分子に対数関数を代入すると
\lim_{h\to 0}\frac{log_a(x+h)-log_ax}{h}
下図は、この定義式と \frac{1}{x} の値を比べたものです。定義式と \frac{1}{x} の値が等しくなるのは a の値が2.7182818284... のときです。この a を e と定義します。

* x=10 としてプロットした。e の値は x の値によらない。
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e を底とする対数を自然対数といいます。自然対数の関数は次のように表記されることがあります。
y=log_{e}x\equiv \ln x
この対数関数の微分は、定義から
y'=\frac{1}{x}
下図は y=\ln x と y' のグラフです。関数の特徴をいくつか示します。
x<0 のとき、y と y' は定義できない
x\to 0 のとき、y\to -\infty、y'\to +\infty
x=1 のとき、y=0、y'=1
x の値が0にとても近いとき、y の値は -\infty にとても近くなります。-\infty はとてつもなく小さな数です。x が0近傍からわずかに増えると y の値は想像を絶するほど増えます。宇宙の谷底から光速でグワッと浮き上がってくるイメージです。x=1 のとき、自然対数の値は0、微分の値は1となります。x>1 のとき、微分の値は1より小さくなります。x の値がとても大きいとき、微分の値は0にとても近くなります。y の値はとてもゆっくり増えるようになります。

(動画で無限小と言ってしまっていますが、正しくはマイナス無限大です…)
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3 底が e の指数関数
つづいて、底が e の指数関数を考えます。なんとも不思議なことに、底が e の指数関数の微分は微分前の関数と全く同じです。
y=e^x、 y'=e^x
下図は y=e^x と y'=e^x のグラフです。関数の特徴を示します。
x=0 のとき、y=1、y'=1
x=1 のとき、y=e、y'=e
指数関数は、すべての x の値について y と y' を定義できます。x の値がとても小さいとき、y と y' はいずれも0にとても近い値を取ります。x の値が1を超えると y と y' はいずれも急増します。x の値がとても大きいとき、y と y' はいずれもとても大きな値を取ります。

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e を底とする関数の微分が関数自身になることを、微分の定義式を使って確かめましょう。微分の定義式は
\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}
この定義式の分子に a を底とする指数関数を代入すると
\lim_{h\to 0}\frac{a^{x+h}-a^x}{h}
下図は、この定義式と 微分の値 e^x の値を比べたものです。定義式と e^x の値が等しくなるのは a の値が2.7182818284... のときです。

e は、対数関数の微分の値が \frac{1}{x} となるような対数の底、かつ指数関数の微分の値が e^x となるような底です。とても不思議で面白いですね。
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4 対数と指数の関係
対数と指数は互いに逆関数の関係にあります。まず、指数から対数の関係をみましょう。指数関数 y=e^x について、x=2 のときの y の値は
y=e^2=7.389...
この値を対数関数 x=\ln y に代入すると
y=\ln 7.389=2
不思議なことにはじめの数、2に戻りました。このように数がもとに戻る関数のペアを逆関数といいます。さらに、得た y の値 2を指数関数に代入すると
y=e^2=7.389...
7.389...という値に戻ります。したがって、対数から指数をみても、逆関数の関係にあります。この結果をもとに
y=ln e^y、 x=e^{ln x}
という関係が導かれます。

今回は、とてつもなく不思議な数 e についてでした。このように e を定義すると、対数と指数の微分がとても楽になります。この点については次回以降みることにしましょう。
ネイピア数の詳細はこちらを。イメージをひろげましょう!
https://www.youtube.com/watch?v=m2MIpDrF7Es
https://www.youtube.com/watch?v=sULa9Lc4pck