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2024年4月26日

集合から空間へ(Metric Space)

※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。


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「集合論のはなし」の次のシリーズについて、少し考えてみました。

  • 確率知りたい! → ルベーグ積分 → リーマン積分 → 関数
  • L^2空間!ヒルベルト空間! → まず距離空間 → やはり関数
  • フーリエ変換! → 複素解析 → まず実解析 → またまた関数

解析、代数、幾何という数学の三大分野のうち、現段階では解析っぽいものに興味があるようです。解析の第一歩として、距離空間を次シリーズに選定します。

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順序から距離へ
「集合論のはなし」では関係、中でも差を評価する順序や整列についてみました。線分の集合X=\{a, b, c, d\}を例に振り返りましょう。a の長さは1cm、b の長さは1cm、c の長さは1.1cm、d の長さは30cmとします。このとき、短い線分から順に並べると

a\leq b<c<d

これは順序で評価した不等式です。ただ、bc の長さの差より cd の長さの差の方がはるかに大きいので、上の不等式はかなりアバウトな印象を与えます。ネットスラングでは「差に差がある」ことを次のように表記するようです。

a\leq b<c<<<d

これで十分気持ちは伝わりますが、<<< をもう少しうまく表したいところです。試みに長さの差(距離を測ってみます。abbccd の長さの差はそれぞれ

b-a=0 (cm)
c-b=0.1 (cm)
d-c=28.9 (cm)

線分の長さの差に違いがあることがはっきりしました。「差の差」を知りたいとき、距離の概念は使えそうです。距離の概念は、ランドセルに30cm定規を差して登校する小学生がいるくらい身近なものでもあります。


距離の測りかた
線分の長さの差のうち、d-c=28.9(cm)に注目します。これは、線分 d の長さから線分 c の長さを引いたものです。もし、短い線分 c の長さから長い線分 d の長さを引いてしまうと、測定結果はマイナスになります。

c-d=-28.9(cm)

私たちは距離を負値で表記しません。非負値で表記します。必ず非負値を返してくれる測りかたに絶対値があります。一般に、2点 x, y の距離を絶対値で測ると

|x-y|

もうひとつよく知られている距離の測りかたに差を2乗してルートをとる、いわゆる三平方の定理があります。たとえば、2つの格子点(3, 0)(0, 4)の距離は

\sqrt{(3-0)^2+(4-0)^2}=\pm 5

ここでも非負の値、+5を取ります。この測りかたをユークリッド距離(Euclidean distance)といいます。こんなふうに距離を測ることができます。


集合から空間へ
ここまでで、順序の概念を少し洗練させて距離の概念を導入しました。では、距離を測れるのはどのような集合でしょうか。この問いについて考えるために、太っちょの三角定規 📐斜辺の長さ、すなわち2つの格子点(1, 0)(0, 1)の距離を例に取ります。ユークリッド距離を測ると

\sqrt{(1-0)^2+(1-0)^2}=\sqrt{2}

\sqrt{2}は自然数でも、整数でも、有理数でもありません。実数に含まれる無理数です。身近に存在する距離を要素に持たない自然数、整数、有理数は、ユークリッド距離を測る対象になじみません(完備でない距離空間)。測定法と集合は、取りうる測定値のすべてが、その集合の要素であるような関係であるべきです。ユークリッド距離など、ふつうの測りかたで距離を測れる集合は、実数などに限られます(完備距離空間)。

小学校のとき、私たちは数直線上の距離を測りました。数直線は実数の全体\mathbb{R}を線に見立てたものです。中学では、垂直に交わる数直線から成る座標平面上の距離を測りました。座標平面は実数の直積\mathbb{R}\times\mathbb{R}を平面に見立てたもので、\mathbb{R}^2と表記します。高校では、互いに直交する3本の数直線から成る空間内の距離を測りました。3次元空間は実数の直積 \mathbb{R}\times\mathbb{R}\times\mathbb{R}を空間に見立てたもので、\mathbb{R}^3と表記します。私たちが学校で距離を測ったのは、あらゆる測定値が集合の中にあるような、注意深く選ばれたフィールド内でのことでした。

一般に、dという方法で距離を測る非空な集合X距離空間(metric space)といい、(X, d)と表記します。