2024年4月17日

カントール集合の濃度(Set Theory)

※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。


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カントール集合という不思議な集合があります。これは、線分を3等分して得られる短い3本の線分のうち、真ん中を除く左右2つの線分を残す作業を何度も繰り返して得られる、とてつもなく短い線分(点)の集まりです。

0から1までの閉区間を出発点に考えましょう。長さ1のこの線分を3等分すると、短い線分が3本得られます。これらのうち、真ん中の開区間 $(\frac{1}{3}, \frac{2}{3})$を捨て、左の閉区間$[0, \frac{1}{3}]$と右の閉区間$[\frac{2}{3}, 1]$を残します。

残した2本の線分それぞれをまた3等分して、真ん中の開区間を捨て、左右の閉区間を残します。残るのは$[0, \frac{1}{3^2}]$、$[\frac{2}{3^2}, \frac{3}{3^2}]$、$[\frac{6}{3^2}, \frac{7}{3^2}]$、$[\frac{8}{3^2}, 1]$という4本の線分です。

残した4本の線分それぞれをまた3等分して、真ん中の開区間を捨て、左右の閉区間を残すと、さらに短い8本の線分になります。分割の回数と分割後に残る線分の本数の関係は、次のようになります。

0回 → 1本 ($=2^0$)
1回 → 2本 ($=2^1$)
2回 → 4本 ($=2^2$)
3回 → 8本 ($=2^3$)

一般に、$n$回目の分割後、線分は$2^n$本になります。この作業を可算無限回繰り返して得られる、とてつもなく短い長さ「0」の線分(すなわち点)の集まりがカントール集合です。よって、カントール集合には$|2^\mathbb{N}|$個の要素があります。

$$カントール集合の濃度=|2^\mathbb{N}|$$

興味深いことに、カントール集合の濃度は実数の濃度に等しいです。

$$カントール集合の濃度=|2^\mathbb{N}|=|\mathbb{R}|$$

文系の私は、ペンキでべたっと塗りつぶすように数字がならんいでいるイメージで実数を捉えていましたが、どうでしょうか… 数と数の間に必ず別の数があるという、入れ子構造が無限に続くイメージの方が近いかもしれません。

稠密性のイメージはこれだと思うのですが、完備性はどうなんでしょうか。稠密性+完備性もこんなイメージで大丈夫な気もしますが、あるいはやはり「べたっと」のほうがいいのか、集合を内から見るときと、外から見るときの見え方の違いかもしれませんが…

私たちが日常触れる物質は手触りがしっかりしていて、確固たる実体があるように感じます。鉄はカチコチに固いですよね。しかし、実際には鉄の原子は核の周りを電子が飛び回るスカスカの構造をしているようです。それと似ているかな、と思います。

無限の入れ子構造をフラクタルといいます。こちらをご覧ください。次元が整数でないとき、とてつもなく複雑な入れ子構造(どれだけズームインしても変わらない"粗さ"のレベル)が発現するようです。

フラクタルの図形には、マンデルブロー集合やコッホ曲線、メンガーのスポンジなど面白いものがあります。下のリンクをご覧ください。(動画酔いしそうな人は用語に対応する画像を探してみてください。)


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ここで自然数と有理数の濃度が等しいことに注目します。べき集合がもとの集合を完備化する操作なのであれば、有理数のべき集合と有理数を完備化した実数は概念的に同値にみえますがいかがでしょうか…

$$|\mathbb{N}|=|\mathbb{Q}|$$
$$|2^\mathbb{N}|=|2^\mathbb{Q}|$$
$$|2^\mathbb{Q}|=|\mathbb{R}|$$

ただ、有理数を完備化したものが実数といいましても、二次方程式という操作で閉じているためには虚数を導入する必要がありそうですが、この点はどうなんでしょうか… また少し勉強したいと思います。


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集合論のことばでは、「完備化」のことを閉包をとるといいます。任意の実数$x$が有理数であれば、$x\in\mathbb{Q}$となります。$x$が無理数であれば、有理数の可算・稠密の定義から、無理数$x$に向かう有理数の点列を生成できます。すなわち$\{\boldsymbol{x}_j\}\subset\mathbb{Q}$です。これはそのまま導集合ですから、無理数$x$は$\mathbb{Q}$の導集合の要素(集積点)です($x\in\mathbb{Q}^d$)。これらの結果をまとめると

$$x\in\mathbb{Q}\cup\mathbb{Q}^d$$

右辺は閉包に等しいので、任意の実数$x$は、有理数も無理数も、有理数の閉包の要素であることがわかりました。

$$x\in\overline{\mathbb{Q}}$$

すなわち、有理数の閉包をとったものが実数です。

$$\mathbb{R}=\overline{\mathbb{Q}}$$

稠密な部分集合$\mathbb{Q}$の閉包が$\mathbb{R}$ですから、実数は可分な(separable)集合です。


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カントール集合は濃度$\aleph_0$、測度0の不思議な集合です。