2024年4月16日

写像と濃度(Set Theory)

※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。


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写像は集合の濃度を調べるツールと考えると、よいのかもしれません。

単射とは、出所である定義域のすべての要素の像が別々だということです。これまで用いてきた集合を少しだけ変えて例にしましょう。数の集合 $\{1, 2, 3\}$からメニューの集合$\{カレー, 天丼, ラーメン, ピザ\}$への写像 $f$ を考えます。1のボタンを押すとカレーの食券、2のボタンを押すと天丼の食券、3のボタンを押すとラーメンの食券が出てきます。この写像は、定義域のすべての要素が異なる像を持ちます。

$1\stackrel{f}{\mapsto}カレー$
$2\stackrel{f}{\mapsto}天丼$
$3\stackrel{f}{\mapsto}ラーメン$

もう1つのメニューであるピザの食券に対応するボタンはありません。このように、定義域のすべての要素の像が異なり、かつ終域に余りが生じうるとき、単射といいます。このとき、2つの集合の濃度は

$$|数の集合|\leq|メニューの集合|$$

となります。数の集合の濃度は3、メニューの集合の濃度は4ですから明らかです。一般に、集合$A$から集合$B$への単射が存在するとき、次の濃度の関係が成り立ちます。

$$|A|\leq|B|$$

全射とは、行先である終域のすべての像に至る定義域の要素があるということです。ここでは上の例から少し変えて、数の集合$\{1, 2, 3, 4\}$からメニューの集合$\{カレー, 天丼, ラーメン\}$への写像 $g$ を考えましょう。1のボタンを押すとカレーの食券、2のボタンを押すと天丼の食券、3のボタンを押すとラーメンの食券、4のボタンを押してもラーメンの食券が出てきます。この写像は、終域のすべての要素が、その要素に至る始域の要素を持ちます

$1\stackrel{g}{\mapsto}カレー$
$2\stackrel{g}{\mapsto}天丼$
$3\stackrel{g}{\mapsto}ラーメン$
$4\stackrel{g}{\mapsto}ラーメン$ 

写像の定義から、定義域に余りが出てはいけません。定義域のすべての要素から矢印が出ていないといけません。行先である終域の像が同じであっても構いません。このように、終域のすべての像に至る定義域の要素があるとき、全射といいます。このとき、2つの集合の濃度は

$$|数の集合|\geq|メニューの集合|$$

となります。数の集合の濃度は4、メニューの集合の濃度は3ですから明らかです。一般に、集合$A$から集合$B$への全射が存在するとき、次の濃度の関係が成り立ちます。

$$|A|\geq|B|$$

集合$A$から集合$B$への写像が単射であれば$|A|\leq|B|$、集合$A$から集合$B$への写像が全射であれば$|A|\geq|B|$となります。そうであれば、単射と全射の特徴をあわせ持つ全単射は、$|A|\leq|B|$かつ$|A|\geq|B|$ですから

$$|A|=|B|$$

濃度が等しくなるしかありません。こうしたことから、写像は濃度を調べるツールといえます。