2024年4月29日

内点、開集合、閉集合、内点集合、集積点、導集合、閉包(Metric Space)

 ※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、あるいは専門書で必ず確認をお願いします。


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前回の記事の終わりに、収束を調べるときには定義域から孤立点を除くことをみました。今回は、孤立点や導集合など、分析に用いるツールをいくつか紹介します。ここでの説明は、すべて距離空間$(X, d)$に関するものであり、$x$は$X$の要素、$E$は$X$の部分集合、$\varepsilon$は任意の小さな正の数とします。


内点、外点、境界点、触点
$x$ とそのすぐそばの点がともに$E$の要素であるとき、$x$ は$E$の内点(interior point)といいます。開球を用いて内点を表記すると

$$B_X(x, \varepsilon)\subset E$$

$E$の補集合$E^c$の内点を外点(exterior point)といいます。開球を用いて外点を表記すると

$$B_X(x, \varepsilon)\subset E^c$$

内点でも外点でもない点を境界点(frontier point)といいます。数直線上の区間のきわ(よく白丸や黒丸で表されるはしっこ)に置かれた点、円の縁に置かれた点、球の表面に置かれた点は境界点です。$x$は$E$の内点、外点、境界点のいずれかになります。

内点と境界点を合わせたものを触点(adherent point)といいます。


開集合と閉集合
$E$の部分集合$E_j$の内点すべてからなる集合を開集合(open set)といい、開集合の補集合を閉集合(closed set)といいます。縁が開いた集合が開集合、縁が閉じた集合が閉集合です。数直線を例にとると開区間は開集合、閉区間は閉集合です。

空集合$\varnothing$と全体集合$X$は開集合かつ閉集合とします。これらは例外的なものとして覚えておきましょう。回りくどく「$E$の部分集合$E_j$」としたのは、次の内点集合との関連からです。


内点集合
$E$の最大の開集合を内点集合とか内部(interior)開核(open kernel)といいます。ここでも数直線を例にとります。$E=[1, 3]$であるとき、$E_1=(1, 2)$、$E_2=(1.5, 2.5)$、$E_3=(2, 3)$はいずれも$E$内の開集合ですが、最大の開集合ではありません。最大の開集合はこれらの和集合、$(1, 3)$です。これを内点集合といいます。

外点をすべて集めた集合を外点集合とか外部(exterior)といい、境界点をすべて集めた集合を境界点集合(frontier)といいます。お互いの積集合はすべて空集合になり、これら3つの和集合は全体集合になります。内点集合を $E^i$、境界点集合を$E^f$、外点集合を$E^e$とおいて表記すると

$$E^i\cap E^f=\varnothing E^i\cap E^e=\varnothing E^f\cap E^e=\varnothing$$
$$E^i\cup E^f\cup E^e=X$$

世界は、風船の中と表面と外からできている、という感じです。


有界
$E$が閉球に収まるとき、$E$は有界(bounded)であるといいます。再び数直線を例にします。開区間$E=(-1, 1)$は閉球$B_X(0, 2)$、すなわち閉区間$[-2, 2]$、に収まります。よって集合$E$は有界です。


集積点と孤立点
$x^*$に向かう収束列 $\{\boldsymbol{x}_j\}$が$E/x^*$の部分集合であるとき $x^*$を$E$の集積点(accumulation point)といいます。

よくわかならい、というのが正直なところだと思います。「なぜ$x^*$を除いた部分集合を考えるのか」と思います。ただ、集積点は幅広い集合に適用できるようによく考えられた概念であることに注意したいです。

見通しをよくするために数直線を例にします。開区間$(0, 1)$と2の和集合を$E$とおきます。$E$の要素である数直線上の点2のように、集合内の他の要素から孤立している要素を孤立点(isolated point)といいます。孤立点に向かう点列を$E$の要素で生成しようがありませんので、孤立点は集積点になり得ません。前にも書きましたが、ゴールが絶海の孤島であるとき、そこへ徒歩で向かえますか? ということです。集積点は、孤立点を集合から除外するのに使えます。

また、集積点は集合に属している必要はありません。引き続き開区間と点の和集合$E$を用います。0は$E$の要素ではありませんが、$E$の集積点です。なぜかというと、$E$の要素で0へ向かう点列を生成できるからです。$\{0.1^j\}$は$E$の部分集合であり、0へ向かう点列の例です。

幅広い集合のようすをつぶさに調べるツールとして集積点は有益です。


導集合と閉包
$E$の集積点すべてからなる集合を$E$の導集合(derived set)といい、 $E^d$と表記します。そして、$E$を部分集合とする最小の閉集合を$E$の閉包(closure)といい、$\overline{E}$と表記します。閉包はまた、触点すべてからなる集合でもあります。集合、導集合、閉包には次のような関係があります。

$$\overline{E}=E\cup E^d$$

再び数直線上の集合$E=(0, 1)\cup 2$を考えます。$E$の導集合は$[0, 1]$です。これは、孤立点である2は集積点ではなく、0と1は集合$E$に属していませんが$E$の集積点であるためです。$E$に属していない$E$の導集合の要素は$E$の境界点ですので、右辺は$[0, 1]\cup 2$となります。0から1までが閉区間に変わります。左辺の閉包は$[0, 1]\cup 2$ですので、上の等式は成り立つことが確かめられます。

$E$が閉集合であるときには、次の関係が成り立ちます。

$$E^d\subset E$$

$E$を閉集合$[0, 1]\cup 2$としましょう。導集合は孤立点を除き、境界点を含みますので、$E^d=[0,1]$となります。よって、$E^d$は$E$より要素2の分だけ小さい集合になります。

また、閉包は内点集合と境界点集合の和集合です。つまり

$$\bar{E}=E^i\cup E^f$$


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上限と下限、最大元と最小元
・開集合の場合
数直線の開区間$(0, 1)$を例にします。この開区間には最大元も最小元もありません。しかし、1という上限と0という下限はあります。

・閉集合の場合
数直線の閉区間$[0, 1]$を例にします。この閉区間には1という最大元と0という最小元があります。また、1という上限と0という下限もあります。

これをどう理解するかですが、集合の要素を内点、外点、境界点の3種に分けるとすっきりしそうです。孤立点がない集合について

  • 上界、下界:外点集合と境界点集合
  • 上限、下限:境界点集合
  • 開集合:内点集合
  • 閉集合:内点集合と境界点集合


三分法で眺めると整理しやすそうです。この点、切断により集合は必ず半開区間と開区間に二分されるという連続の公理(デデキントの定理)はあまり強調しすぎないほうがよいのかもしれません…