※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、専門書等で必ず確認をお願いします。
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前回、線型代数のやさしい例として数直線上の和とスカラー倍をみました。この記事では、小学校(数直線)から中学校(平面)に進みます。
いわゆる「横と縦」のひろがりを持つものを平面といいます。平面に置かれた点の座標は($x$ 軸の値, $y$ 軸の値)という数字のペアで表します。たとえば、下図のオレンジ色の点の座標は $(2, 3)$ です。この点は、原点から右に2だけ進み、中間地点の座標 $(2, 0)$ から上に3だけ進んだところにあります。1つめの矢印の終点を2つめの矢印の始点とするのは前回の数直線の場合と同じです。前回と異なるのは、矢印が横軸(数直線)を上下にはみ出せるところです。
向きと長さを持った矢印をベクトルといいます。ベクトルの和とは、1つめの矢印の終点に2つめの矢印の始点をくっつけて、最終到達点の座標を探る作業です。和は、青色点線の矢印になります。
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これを線型代数の記法($f(ax+by)=af(x)+bf(y)$)の右辺で書くと
$$2\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}+3\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 2 \\ 3 \end{pmatrix}$$
左辺に数字を縦に2つ並べたかっこが2つあります。これらがベクトルです。左のかっこは、原点から座標 $(1, 0)$ へ向かう矢印を表にしたものです。右のかっこは、原点から座標 $(0, 1)$ へ向かう矢印を表にしたものです。これらのベクトルはともに長さが1であり、座標平面を表現する最も基本的なベクトルであることから、標準基底(ベクトル)といいます。碁盤目状の街を地図に表現するときに不可欠な長さの単位だと考えてください。
1つめの標準基底(右に1だけ進む矢印)には2が掛け合わされています。これは右に標準基底の2倍進むことを意味します。2つめの標準基底(上に1だけ進む矢印)には3が掛け合わされています。これは上に標準基底の3倍進むことを意味します。結果として、座標 $(2, 3)$ に到達します。
「矢印を引き伸ばす」と言われてもよくわからない、という人もいるかもしれません。しかし、私たちは毎日のように図形の大きさや向きを変える作業をしています。スマホやタブレットの画面を大きくしたり、小さくしたり(ピンチイン・ピンチアウト)していますよね。ここで考えているのはまさにこの操作です。線型代数と聞くと思考停止してしまいますが、iPadの操作を記述したものと考えれば「なんだ、そんなこといつもやっているよ」と気持ちが楽になります。
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前回例に挙げた数直線は、上に向かう標準基底がない特殊な場合です。$1+2=3$という足し算であれば、右に向かう標準基底だけを用いて、次のように表記できます。
$$1\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}+2\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 3 \\ 0 \end{pmatrix}$$
原点から右に1進んだところに置かれた点の座標は $(1, 0)$ です。この座標からさらに右に2進んだ座標は $(1+2, 0)$、すなわち $(3, 0)$ です。
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数直線から面へ、少しずつ概念を拡張していけば、難しさの段差を感じなくて済むのではないでしょうか。さらに深めたい人は3Blue1Brownの動画(内積と双対)をご覧ください。