2025年1月26日

数直線で考える線型代数

※私は数学者ではありません。自分用のまとめとしてこれを書いています。楽しむ範囲でご覧いただければ幸いです。内容の正確性については専門家のサイトや動画、専門書等で必ず確認をお願いします。


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大学の数学に線型代数という分野があります。少しだけ学んだ人は「行列式や逆行列など計算がとても多くて大変な分野」と敬遠しがちです。私もそうでした。


ただ、データサイエンスやAIの時代が到来し、線型代数を避けて通れなくなっています。食わず嫌いを乗り越え、文系でもある程度楽しめる、使えそうな気持ちになることは重要だと思います。そこで、何回かに分けて、文系にとっての線型代数を紹介したいと思います。(専門的、網羅的ではなく、イメージ重視です。)


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まず、分野の名称についてですが、線型代数(Linear Algebra)には線型と線形という書き方があるようです。型と形の違いを調べてみると…

  • 型(かた):基準や分類にしたがう様。空手の型、小型車。
  • 形(かたち):見た目、すがた。平行四辺形、美形。

Linear Algebraに対応する表記としては、線型のほうが合うようです。では線型とはどのような型なのでしょうか。次式は、$x$ を $a$ 倍したものと $y$ を $b$ 倍したものの和を入力して得られる関数の値は、$x$ を入力して得られる関数の値を $a$ 倍したものと $y$ を入力して得られる関数の値を $b$ 倍したものの和に等しいことを表しています。

$$f(ax+by)=af(x)+bf(y)$$

料理が得意な人は、「味付けしてから煮るのと煮てから味付けするのが同じはずない」と思いますよね。確かに、上の式が成り立つのは数学の世界でも珍しいです。それで、この特別な型にしたがうものを線型といいます。ただ、こう聞いても私たちは「?」ですよね…


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そこで、視覚的にわかりやすいものとして、矢印(→)が用いられます。実は、このブログの初めの記事に矢印が登場していました。


1+2という足し算は、0を起点に長さ1の右へ向かう1つめの矢印に、1を起点に長さ2の右へ向かう2つめの矢印をくっつける作業です。作業の結果、2つめの矢印のやじりは3に到達します。それで、1+2=3となります。(引き算の場合は、2つめの矢印が左に向かいます。)


1×2という掛け算は、0を起点に長さ1の右へ向かう矢印を2倍に引き伸ばす作業です。作業の結果、引き伸ばされた矢印のやじりは2に到達します。それで1×2=2となります。(割り算の場合は、元の矢印縮める作業になります。)


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数値例で線形性の理解を深めましょう。右に1進む矢印を $x$、右に4進む矢印を $y$ とおきます。そして、$a=2$, $b=1/2$とおきます。このとき、$f(ax+by)=af(x)+bf(y)$ が成り立つか確かめてみます。簡単化のために $f(z)=z$ とします。

左辺の計算方法

$$f(ax+by)=f(2×1+(1/2)×4)=f(2+2)=4$$

右辺の計算方法

$$af(x)+bf(y)=2×f(1)+1/2×f(4)=2+2=4$$

いずれの計算結果も4、すなわち原点を起点に右に4進む矢印になりました。このように、矢印の伸び縮みと連結の結果をまた矢印で表せることを、和(矢印の連結)とスカラー倍(矢印の伸縮)で閉じているといいます。



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「で?」
「こんなの小学生でもわかるよ」

という声が聞こえてきそうです。実は、まさにこれが(私たち文系の範囲での)線型代数です。専門書をみると1ページ目からとてつもなく難しいことが書いてありますが、慣れ親しむ観点からは、この数直線の例を少しだけ膨らませたものが線型代数と考えてしまってよいと思います。むしろ「なんだこんなことか…」の範囲でどんどん便利に使うものが線型代数です。